基本的考え

我々が組織を運営していくにあたって、
重視したいことを以下にまとめています。

我々が大事にしたいこと

これまで、成人の自閉症者と多くの時間を共に過ごし、生活場面を見てきた。そこから、大人になるまでにしておきたいことや、小さい頃の親御さんとの関わりの重要性を知った。

また、児童相談所での業務を通して、重度の知的障害の子供による行動障害への悩み、軽度の知的障害や境界知能の子供を持つ親御さん達の、苦悩や将来への不安、また将来への期待を知る。

精神科の先生に「発達障害」と言われたが、発達障害は治るのか、そもそも発達障害とは何か?知能検査の結果として「IQ値は〇〇で、精神年齢で2年くらい知的な発達が遅れている」などと言われたが、追いつくことはできるのか?普通になることはできるのか?また、講演会などに参加することで、自分の子供もきっと同じように目を見張るような改善を示すのではないかといった期待と、叶わなかったことへの失望など様々である。

我々が大事にしたいことは、障害のある子供を理解することである。「なんで?」と子供の振る舞いの裏にある理由や意図が分からなければ、子供を受け入れることが難しくなってしまう。もちろん、子供を完全に理解することなどは不可能である。それでも、親御さんが「なるほど、そうだったのか」と理解、納得できることが大事であると考える。そのような理解、納得により、親御さんの不安や心配事を減らし、子供としっかりと向き合っていけるようお手伝いすることを目指す。それは、幼児期だけでなく、児童期や思春期においても、子供にとって何よりも大切なものは親御さんとの日々の関わりであると考えるからである。



子供を理解するための視点

障害のある子供をよりよく理解するための視点として、3つの側面が重要と考える。

  1. 障害特性
  2. 知的障害の程度
  3. 生育歴

当たり前のことであるが、専門の学問を修め、関連する仕事に従事してきた人であれば、1.と2.の側面から子供を理解していくことができる。そして、これまでに多くの自閉症の方の問題行動の解決や支援の組み立てを行ってきた。ただ、その中で困難であったケースも当然あった。それは、生育歴の情報が不足している場合や生育歴に関連する場合であった。3.の側面に関しては、いくら専門性があってもどうにもならないことであり、これこそは親御さんにしか分からないことなのである。
そのため、子供をより深く理解していくためには、親御さんとの協力が絶対に必要なのである。

障害を受容すること

障害を受容することが、「障害」をそのまま障害名として「飲み込まなければならないこと」であったら、それはとても困難なことである。それを親御さんや、ご家族が自分たちだけで行わなければならないとなると尚更である。しかし、障害を子供の特性、得意なところや苦手なところと考え、目の前にいる子供をよりよく理解することに変えることができれば、それは子供の将来のために繋げることができるはずである。

我々は知的障害について、発達障害について、豊富な経験と知識を持っている。ご家族が納得いくまで、自分の子供の障害について話し合うことができればと考える。そうすることで、子供をよりよく理解することのお手伝いをしていきたい。

2次障害を防ぐ

重度の障害と軽度の障害、どちらについても言えることとして、2次障害を防ぐことの重要性がある。現場で仕事をしていて痛感することとして、2次障害(精神障害)が加わることによる問題の複雑化、困難化がある。

例えば、親御さんに受容されず、ネグレクトのような対応を受けてきた重度の方と、親御さんに受容され、大変であっただろうがともに生活してきた重度の方とでは、難しさの質が全く異なるのである。同じように障害特性を踏まえた対応が、効果的となることはある。しかし、前者の場合には、障害特性の理解や知的障害についての理解が、全く無効となってしまう状態が突然生じてくるのである。おそらく、心理療法的なアプローチが必要なのだろうが、知的な難しさが邪魔をして、心理療法的にアプローチすることがそもそも困難なのである。
これに対してできることは、ごく限られたものであり、唯一有効と言える対処法といえば、未然に防ぐことだけであると考える。そのためにも、子供への理解を深めていくこと、子供との関係を少しでも改善していくことが何より大事であると考える。


重度の障害と軽度の障害

それぞれの困難

重度と軽度、それぞれにそれぞれの難しさがある。

重度の難しさといえば、強度行動障害のような問題行動への対処法に関することが挙げられるだろう。ただ、強度行動障害児者への基本的な対処法はかなり確立しつつある。例えば、応用行動分析学の手法とTEACCHプログラムの構造化の手法を合わせた氷山モデルというものがある。もちろん、氷山モデルというのは一つの療育法であり、親御さんがご自宅で子供に対して実施するようなものではない。親御さんは、子供と最も近いところにあり、日々のやり取りから関係性が出来上がってしまっている。つまり、療育をする人としてはあまりに密接な関係にあり、療育者として存在することが難しい立場にある。

軽度の難しさは全く違ったものである。おそらく「分からなさ」ということになるだろう。軽度であればあるほど、周囲に対しての分かってもらえなさ、やればできるのでは、普通になるのではという障害自体の分からなさがある。また、どこまで期待できるのかの分からなさ、子供自身がどこまで理解できているのか、どこまで説明してよいのかの分からなさもある。それに加えて、子供自身の学力や交友関係などの問題がある。正直、専門家でも軽度の知的障害や境界知能の本態を把握することは難しいのである。

療育・相談について


療育についてはもちろんのこと、相談についても継続することが大事であると考える。自閉症や軽度の知的障害ついて、理論的に捉えることができていることで、個別の対応が可能となる。しかし、子供や子供を取り巻く状況は同じであることは決してないので、それぞれに適した対応が必要になる。ただし、親御さんへのアドバイスが一度でうまくいくことは稀で、微調整が必要となるはずである。つまり、親御さんに対して行ったアドバイスの結果をフィードバックしてもらうことで、より適切なアドバイスが可能となるのであり、このプロセスを親御さんと一緒に繰り返していくことがとても大事になると考える。

理論化:応用するために

現場で仕事をしていて思うこととして、子供によって現象は様々であり、多様性に富んでいる。どのような現象にも対処していくためには、理論化されていることが必要である。それは、きちんと理論化できていれば、どのような現象にも応用することが可能となるからである。

もちろん理論が完全であることはない。ただ、不完全であっても理論化しようという意思があれば、新たな現象や説明の難しい現象に直面した時に、理論を変更しより良い理論としていくことができる。

理論化することには、もう一つの意義がある。それは、支援を行う側にとっても、職人芸のような支援者個人の特性に頼る必要がないことである。つまり、きちんと理論化できていれば、支援する人が誰であるか、対処する問題が何であるかの重要性は下がり、一般化や応用が可能となるのである。

結果としての脳機能障害

  発達障害とは脳機能障害と言われている。つまり、脳の特定部位の機能障害を原因として、発達障害は現象すると考えられている。
 しかし私たちは、脳機能の障害を発達過程の結果と考え、脳の機能障害という概念自体を説明のために用いることはしない。むしろ、発達障害の原因(本態)を別のところに求めたいと考えている。具体的には、注意や知覚、記憶といった初期の認知過程の特異性がそれであり、日々の知覚経験の累積によって、そのような初期の認知過程における特異性がバイアスをもって増幅し、特徴的な現象(症状)となると考えている。
 もちろん、発達障害が治るとは考えていない。それでも、発達障害の本態に迫ろうと努力することは、何に対しどのようにアプローチしていくのかを明確にすることに繋がるので、療育の質に影響すると考える。